個人事業主の法人成り 後編~法人成り後はここを押さえる!~
こんにちは。千葉県鎌ケ谷市の税理士池田光智です。
「個人事業主の法人成り」の前編では最終事業年度の確定申告の注意点についてご紹介しました。
後編では、法人成り後に気を付けるべき事項をまとめましたので、前編とあわせてご参照いただければ幸いです。
後編:法人の成り後はここを押さえる!
1.法人の設立届出関係
法人設立登記後は、以下の税務手続きが必要となります。
税務手続きには期限があり、提出しないで損するケースがありますので、事前に確認しておきましょう。
≪法人設立に伴い必要な届出≫
①法人設立届出書(国・県税事務所・市町村)
②青色申告の承認申請書
③給与支払事務所の開設届
④源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書(選択する場合)
2.通帳の準備
新事業年度からの取引は法人としての事業となりますので、売上はきちんと法人名義通帳で管理しましょう。
通帳の作成には謄本が必要になりますし、最近はロンダリングやISなどの問題で、審査に時間を要する場合がありますので、早めの準備を心掛けてください。
ただし、通帳の作成が遅れて法人の売上げが個人通帳に入金されてしまっても、法人としての申告を漏れなくすれば課税上は問題ありません。
売上の計上漏れがないか、申告の際は税理士と擦り合わせが必要です。
3.請求書・領収書の変更
通帳の変更に伴い、請求書の請求人や振込先、領収書の発行社名等は新しい商号に変更しておきましょう。
税務的な問題も当然ですが、法人の信用問題にかかわります。
4.各種契約・名義の変更
法人で経費を費用化するには、形式的な名義人をきちんと整えておく必要があります。
契約先と契約の引継ぎをきちんと取りかわしましょう。
・不動産賃貸契約
・リース契約
・各種保険の契約
・車両運搬具等の名義
・水道光熱費の名義
・通信費関連の契約
5.役員報酬の決定
法人成り後、個人と法人の財布は別々になります。
事業主は役員として会社から役員報酬を毎月支給される形式になりますが、定期同額給与(毎月同額)でなければなりません。
役員報酬を期首に設定して、毎月個人通帳に振り込なければなりませんので、1年の収支予測が必要となります。
役員報酬の決め方については本ブログで紹介していますので、こちらをご参照ください。
6.社会保険・雇用保険の加入手続き
法人の場合は、社長1人でも、社会保険に加入する義務があります。
また、土建組合などの健康保険を引き継ぐ場合は、手続き期限がありますので、廃業前から組合等には相談しておきましょう。
従業員がいる場合は、雇用保険の引継ぎ手続きも忘れずに行う必要があります。
7.クレジットカード
設立1期目は信用力がないため、クレジットカードは通常作れませんが、最近では設立1期目からでも法人名義のクレジットカードを作成できるサービスがありますので、必要な方は探してみましょう。
8.事業資金の申し込み
日本政策金融公庫や、信用保証協会を利用した各種創業融資制度があります。
申し込みには事業計画書が必要となります。創業2年(信用保証協会は5年)以内なら同制度を利用して、無担保で事業資金を借り入れすることができますので、興味のある方はご相談ください。
9.名刺、HP、会社案内、封筒、看板、表札、印鑑等の変更
法人化に伴う商号変更で、営業商材の大幅な変更が必要です。
法人化のメリットとして信用力の向上があげられます。取引先や一般消費者に対する営業力にも影響してきますので、細かいですが、広報関係は全て見直しましょう。
10.各種生命保険、小規模企業共済、中小企業倒産防止共済の手続き
小規模企業共済や中小企業倒産防止共済に加入されている方は、法人化に伴い継続手続きが必要となります。加入要件を外れないかも注意しましょう。
また、法人化のメリットとして、保険を活用した節税があります。現在加入している保険の継続でいいのか、法人契約に変更すべきか一度見直してみましょう。
まとめ
今回は法人成り直後の注意点について手続関係を中心にご紹介しましたが、個人事業と法人の課税関係は所得税と法人税で全く異なります。法人成りをする際は、事前に専門の税理士に相談することをお勧めします。
また、個人事業時代にはかからなかった税金や費用が意外とかかります。事業計画を作成し、費用を把握したうえで資金繰りに無理がない計画をしっかり立てておきましょう。
法人成りのメリットは別の機会で本ブログでも紹介する予定ですが、個人事業である程度の規模になったら法人成りは是非ご検討ください。