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個人事業主の法人成り 前編~最終事業年度の確定申告で間違いやすい事項~

 こんにちは。千葉県鎌ケ谷市の税理士池田光智です。
 2月に入り、確定申告の提出時期が近づいてきました。この時期に法人成りを検討される事業者の方も多いのではないでしょうか。
 今回の確定申告を最後に法人成りする事業主や法人成りを検討している方必見の注意点をまとめました。
 前編(本編)に最終事業年度の確定申告の注意点、後編(次編)に法人成り後に気を付ける事項をまとめましたので、ご参照いただければ幸いです。

前編:最終事業年度の確定申告で間違いやすい事項

1.譲渡所得の申告

 法人成りに伴い、事業用資産法人に譲渡した場合には、事業所得ではなく譲渡所得として課税されますので、譲渡所得の申告が必要となります。なお、現物出資した場合も同様の取り扱いとなります。
 また、事業用資産でも棚卸資産の譲渡は事業所得となり、売掛金などの債権の譲渡は通常簿価引継ぎで課税関係は発生しません。

≪資産ごとの所得の取り扱い≫
建物・機械・車両・工具器具備品‥‥譲渡所得
棚卸資産‥‥事業所得
金銭債権‥‥課税関係なし

*例外(以下は事業所得)
使用可能期間が1年未満の減価償却資産
取得価額が10万円未満である減価償却資産
取得価額が20万円未満である減価償却資産で、取得の時に「一括償却資産の必要経費算入」の規定の適用を受けたもの

2.必要経費の算入

 事業を廃止した場合、当該事業年度の事業税の見込額を当該年分の必要経費に算入することができます。
 今年支払った事業税と、翌期支払う予定の事業税の両方を当期の必要経費として算入が可能となりますので、計上漏れのないよう気を付けましょう。
 また、現金主義で経費計上している項目など、他にも当該事業年度の損金で落とすべき支出がないかチェックしましょう。

3.貸倒引当金の戻入

 貸倒引当金を計上している方は、最終事業年度は引当金を計上できませんので、全額戻入することになります。
 また、実際に金銭債権に貸倒れが生じていないかも同時にチェックしましょう。

4.譲渡資産に係る消費税の申告

 消費税の課税事業者の場合は、法人成りに伴う事業用資産の譲渡についても、同様に消費税が課税されますので、申告漏れがないよう注意が必要です。
 また、仕入側の法人1期目は免税事業者となるケースが多いため、仕入税額控除を使えないので、消費税分がそのまま負担となってしまします。
 この負担を軽減する方法として、譲渡側の個人で簡易課税制度を利用する方法や、譲受側の法人で1期目からの課税事業者を選択する方法などがあります。
 ただし、設定を間違えると思わぬ落とし穴がありますので、この件の詳細はまた別の機会に解説します。

5.手続き

個人事業を廃止する場合は以下の税務手続きが必要です。

①個人事業の廃業届
②所得税の青色申告の取りやめ届出書
③事業廃止届出書(消費税課税事業者の場合)
④給与支払事務所等の廃止の届出書
⑤予定納税額の減額申請手続(予定納税がある方)

まとめ

 法人成りの税務処理が正しいかは、設立後の法人の税務調査で入念に確認されますので、申告漏れや申告忘れがないよう細心の注意が必要です。
 また、後編では法人成り後の気を付けるべき事項をまとめています。廃業と設立は表裏一体ですので、法人成りに必要な手続き関係もきちんと押さえておきましょう。

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