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会社設立

会社設立時の相談で多い「消費税の免税事業者の要件」

 こんにちは。千葉県鎌ケ谷市の税理士池田光智です。
 会社設立時の相談で一番多い質問が、消費税についてです。消費税は、比較的新しい税法であるがゆえに、租税回避に使用される度に改正が行われ、納税義務の判定が年々複雑になってきています。税理士に対する訴訟リスクも多い税目でありますので、納税者側も一定の水準で理解しておく必要があります。
 また、小規模の事業者に対して、会社設立当初は納税義務が免除されていますので、起業されようとする方はきちんと押さえておいてください。

1.起業2年間、免税事業者となる要件とは

 消費税では、その課税期間の基準期間(注1)における課税売上高(注2)で当該事業年度の納税義務を判断しますが、資本金1千万円未満で設立した場合、1期目2期目は、基準期間がないため原則、免税事業者となります。資本金999万円の会社がよく見受けられるのは、この規定があるためです。

【免税事業者となる要件】

①新たに開業した個人又は設立された法人であること
②法人の場合、その事業年度開始の日における資本金の額又は出資金の額1,000万円未満であること
③特定新規設立法人(注3)に該当しないこと


(注1) 基準期間とは、個人事業者の場合は前々年、法人の場合は前々事業年度のことをいいます
(注2) 課税売上高とは、国内において行った課税資産の譲渡等の対価の額の合計額から、売上に係る対価の返還等の金額の合計額を控除した残額をいいます
(注3) 特定新規設立法人とは、平成26年4月1日以後に設立した新規設立法人のうち、次のA、Bのいずれにも該当する法人です。
A:その基準期間がない事業年度開始の日において、他の者により当該新規設立法人の株式等の50%超を直接又は間接に保有される場合など、他の者により当該新規設立法人が支配される一定の場合(特定要件)に該当すること。
B:上記の特定要件に該当するかどうかの判定の基礎となった他の者及び当該他の者と一定の特殊な関係にある法人のうちいずれかの者(判定対象者)の当該新規設立法人の当該事業年度の基準期間に相当する期間(基準期間相当期間)における課税売上高が5億円を超えていること。

2.2期目から課税事業者になる場合がある?

 平成25年1月1日以後に開始する年又は事業年度については、特定期間(注4)における取引が、次のいずれも満たす場合は、その事業年度から課税事業者となります。
①課税売上高が1,000万円超
②給与等支払額が1,000万円超


(注4)特定期間とは、次の期間をいいます。
 個人事業者の場合:その年の前年1月1日から6月30日までの期間
 法人の場合:原則として、その事業年度の前事業年度開始の日以後6月の期間
 ※詳しくはこちらをご参照ください。

3.設立3期目以降は前々事業年度前の売上高等で判断

 その課税期間の基準期間における課税売上高1,000万円以下の事業者は、納税の義務が免除されます。
 但し、その課税期間の基準期間における課税売上高が1,000万円以下であっても、特定期間における課税売上高及び給与等支払額のいずれも1,000万円を超えた場合、当課税期間から課税事業者となります。

4.できるだけ免税事業者の期間を確保するには?

 設立時に1期目の課税売上高が、1,000万円を少し超えると予測されるならば、早めに設立して、1期目の課税売上高が1,000万円以下になるようにすれば、3事業年度免税事業者となります。設立時に特定期間の課税売上高及び給与等支払額が、1,000万円を超えると予測される場合も同様の方法で2事業年度免税事業者となります。特に個人事業主が法人成りする場合は、過去の実績からある程度予測がつきますので、事業の移行時期は慎重に判断してください。
 また、毎月の課税売上高及び給与等支給額が明らかに1,000万円を超えるような場合は、別の方法として最初の事業年度を7ヶ月以下に設定しておけば、特定期間がないものと見なされるので、最低19ヶ月免税事業者として、営業することができます。

5.必要な手続きは

 新設法人の納税義務の免除の適用を受ける法人は、「消費税の新設法人に該当する旨の届出書」を、速やかにその納税地を所轄する税務署長に提出することとされていますが、消費税の新設法人に該当する旨の記載をした「法人設立届出書」の提出で済ませることが認められています。

6.課税事業者を選択した方が有利な場合も

 消費税の計算は、「課税売上高に係る消費税」から「仕入税額控除」を差し引いて納付税額を算出します。
 設立1期目は多額の設備投資をすることがありますので、「課税売上高」よりも「仕入れや設備投資に係る費用」が多い場合があります。この場合、超過した分の消費税が還付されます。
 消費税が還付されるためには、課税事業者であることが必要ですから、新設法人で免税事業者となった場合、「消費税課税事業者選択届出書」を提出しておく必要があります。但し、課税事業者を選択した場合、最低でも2年間(場合により3年間)は取り消すことができませんので、有利不利の判定にはご注意ください。

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