節税だけではない法人成りのメリット
こんにちは。千葉県鎌ケ谷市の税理士池田光智です。
前回は法人成りの税務的なメリットをご紹介しましたが、法人成りの意義は節税効果だけでありません。経営的に考えるならむしろそれ以外の効果が大きいといえます。
本日は法人成りのメリットを経営的視点からご紹介しますので、事業を拡大していきたいとお考えの方は是非ご参考にしてください。
節税以外の法人成りのメリット
1、社会的信用力の向上
法人は法務局に登記し、社名、本店所在地、成立年月日、事業目的、代表者及び役員の氏名、資本金額などが公示されますので、外部関係者に対して、取引の安全性、社会的信用力が個人事業に比べ格段に高いといえます。
また、金融機関等に対する信用力も向上し、融資の総枠や条件面でも有利に交渉することができます。
営業効果 ⇒ 営業先へ信用力の向上で販路拡大
規模的効果 ⇒ 掛仕入や受注規模を拡大
資金効果 ⇒ 金融機関の融資審査に影響
2、従業員の雇用
求人募集するにあたっては、個人事業より法人によりいい人材が集まる傾向があります。
また、現在在籍する従業員の安心感が増大し、モチベーションアップとともに、定着率の向上にも資するものと考えられます。
会社の財産はヒトと考えるならば、いい人材を集めることが、会社の拡大・成功に直結します。
雇用効果 ⇒ 雇用機会の改善、従業員の定着
労働効果 ⇒ 生産性の向上
3、出資者の有限責任
個人事業は、倒産時の債務弁済は無限責任で、個人の全財産を処分しなければいけないリスクがあります。
法人の株主は原則として出資の範囲内の有限責任で、倒産時のリスクが比較的低いといえます。
但し、経営者が融資の連帯保証人となっているケースは、法人が倒産した場合、その債務を負うことになりますのでご注意ください。
リスクマネジメント ⇒ 経営者リスクの軽減
4、円滑な事業承継
個人事業の場合、事業主が死亡して相続が発生すると、個人名義の預金口座が一時的に凍結され支払等が困難になり、事業存続に支障をきたす場合があります。
法人の場合の相続時の手続きは、役員変更登記と持ち株の移転のみで基本的に終わり、資産や契約の名義変更等の煩雑な手続きを簡略化でき、比較的スムーズに事業承継が可能となります。
事業承継対策 ⇒ 相続時の円滑な経営引継ぎ
5、事業年度の設定が任意
個人事業では、事業年度は1月1日~12月31日と決められており、事業年度の変更はできません。
法人は事業年度が自由に選択でき、決算期を調整することで、会社運営を円滑に行うことができます。
また、受注を多い時期を決算月とすると、損益予測も立てづらく、翌期の事業計画などの対策も先送りになってしまいます。
決算は時間がある時期に設定し、節税対策と事業計画をしっかりと立てたほうが、経営上も有利です。
繁閑調整効果 ⇒ 事業年度の変更で繁忙期の調整
6、許認可事業の継続可能性
個人事業では、行政の許認可について、事業主が変更されると、前事業主の許認可は消滅し、新事業主が新たに許認可を取得しなければなりません。
法人では、代表者が変更されても法人で許認可を取得しているため、行政に対して代表者変更の手続きを申請するのみで、会社の許認可は存続しますので、個人事業の場合より簡便です。
行政コスト効果 ⇒ 行政手続き継続の利便性
まとめ
2017年度の株式会社・合同会社の設立件数は約11万4千件で7年連続前期比増です。また、会社設立は20万円前後のコストと1円以上の資本金があれば、2週間程度で手続きが可能で、司法書士に頼めば誰でも比較的簡単にできます。
ただし、設立して事業をどのように継続発展させていくかが重要となりますので、安易に設立することはお勧めしません。
私の場合、事業の計画性が甘かったり、法人成りのメリットが薄いと判断すれば、お客様に考え直していただくよう誘導しています。
税理士として目先の利益を優先するなら、法人化して顧問契約を結んでいただく方がいいわけですが、お客様がよりよい事業形態で、発展維持していただかなければ、結局お互い損だからです。
会社設立を迷っている方がいらっしゃいましたら、是非一度税理士にご相談の上、ご納得いくまで考えてみてください。
自分一人で考えているとタイミングや設定を間違えて、大きく損してしまうケースが多々あります。失敗してから学ぶことも多いですが、損失を取り戻すにはあまりに大きな時間と労力とお金がかかってしまいます。
その力は、事業の方向性と対策をしっかり決めてから本来の仕事にかけるべきです。