会計教室①貸借対照表を3分で読む
こんにちは。千葉県鎌ヶ谷市の税理士池田光智です。
本日は忙しい中小企業の社長に簡単な決算書の読み方を紹介します。
入門書的なものですが、基本が一番大事ですので、重要なポイントに絞ってご紹介します。
まず決算書の1ページをめくってください。貸借対照表(B/S)です。貸借対照表は一定時点の会社の資産(左側)と負債(右上)、純資産(右下)の状態を表す財務諸表です。現時点の会社の健康状態がわかる最も大事な財務諸表といえます。
では貸借対照表の基本的な見方とポイントをご説明します。
1、構造
貸借対照表の左は会社の資産を、右は資産を買うための調達資本を表しています。簡単に言うと、どこから資金を調達して何にお金を使ったのかがわかるのが、貸借対照表です。
2、資産の部
(1)流動資産
流動資産とは1年以内に現金化できる資産のことです。
① 現金・預金
現金・預金の動きは最も大事です。利益が出ているのにお金は溜まらない。その理由は貸借対照表から読み取ることができます。社長は現預金の推移を常にチェックし、増減の原因をしっかり押さえておきましょう。また、過大な現金は社長への貸付金とみなされます。税務上のリスクが上がり、金融上の評価は下がりますので、ご注意ください。
② 売掛金・受取手形
現預金の減少の原因のひとつに、売掛金の回収サイトが長いケースがあります。仕入れや給与の支払いサイトから逆算して、無理のない資金繰りが組めるよう、できるだけ早い決済の設定や交渉が重要になります。また、滞留債権は伸びれば伸びるほど回収しづらくなります。取引先ごとの回収がきちんと進んでいるかは最低限毎月チェックが必要です。加えて決算書の勘定科目内訳書の売掛金に2期連続で同じ数字が載っていると、金融機関は不良債権とみなし、純資産からマイナスして評価しますので、ご注意ください。
③ 棚卸資産
税務署は原価率から適正に棚卸資産が計上されているか、金融機関は不良在庫や粉飾決算がないかをチェックします。適正な原価管理の意味からも、棚卸は非常に重要です。不良在庫があるときは節税対策で評価損の計上も検討しましょう。
(2)固定資産
①有形固定資産
有形固定資産は遊休資産がないか、資産の有効活用が図れているか、固定資産台帳と照らし合わせて、定期的に処分や代替をご検討ください。
②投資その他の資産
ゴルフ会員権や有価証券に含み損がないか注意が必要です。関連会社の非上場株式がある場合は評価額がいくらなのか、相続対策上も定期的に試算が必要となります。
(3)繰延資産
繰延資産は経費としてお金を支払ったものの、その効果が将来にわたり影響があるため期間按分して損金計上するために、一旦資産計上している経費です。経費性が強く、金融上は資産として評価されないこともあります。通常は5年以内で償却されます。
3、負債の部
負債は他人資本とも表現されます。文字通り、他人から調達した資本です。
(1)流動負債
流動負債は1年以内に弁済しなければならない負債です。
買掛金や未払金の未納がないかは、財務分析で発覚します。支払漏れがないかを定期的に確認しましょう。
(2)固定負債
長期借入金は内訳をきちんと把握してください。社長からの借入れは金融上は資本金とみなされる場合がありますが、相続時には相続財産(金融債権)となり、相続人に重い負担を強いることになります。社長借入が過度に多い場合は役員報酬を調整するなどして、節税と返済を同時並行で進めましょう。また、金融機関からの借入残高と借入比率もきちんと把握が必要です。金融機関は安全性を重視しますから、適正な数値管理と綿密な事業計画が重要となります。
4、純資産の部
純資産は自己資本とも表現されます。創業時に準備した資本金と、会社が蓄積してきた利益の合計が純資産です。純資産が多い企業は良い経営を行ってきたことが読み取れますし、逆にマイナスの会社は債務超過に陥っており、融資の対象からも外されます。
純資産には会社の価値が反映されています。但し、資産の中に不良債権や含み損のある遊休資産がある場合は、マイナスして評価する必要がありますのでご注意ください。
以上、本日は貸借対照表の基本的な構造と重要なポイントのみご紹介しました。貸借対照表の分析方法は次回をご参照ください。