台風15号・19号・21号で被災された皆様へ
こんにちは。千葉県鎌ケ谷市の税理士池田光智です。
前の台風15号、19号、21号で被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。
全国的に大きな災害をもたらした台風でしたが、弊所が所在する千葉県内では特にすべての台風で甚大な被害が発生し、いまだ復興の道筋が見えない方も多くいらっしゃいます。
税理士会としても復興支援活動の一環として、被災した各地域で無料の税務相談会を実施しています。
皆様には少しでも損害を抑えるために、ご相談窓口をご利用いただければ幸いです。
本日は、確定申告の時期も近付きつつありますので、災害時の税額軽減措置をご紹介させていただき、皆様に情報共有していただくことで、被災者のお役に立つことができれば幸いです。
1、「雑損控除」と「災害減免法」
今回の台風で被災された皆様は、所得税の確定申告をすることで、税金の負担を軽減したり、還付を受けることができる場合があります。
軽減措置は「所得税法の雑損控除」と「災害減免法による所得税の軽減免除」の2つの方法があり、有利な方を選択することができます。
2、誰が所得税の免除や減税を受けられるの?
それぞれの要件は以下の通りです。
(1)雑損控除
次の①②のいずれにも該当すること
①資産の所有者が次のいずれかであること
イ)居住者
ロ)その年分の総所得金額等が基礎控除以下で、その居住者と生計を一にする配偶者その他の親族
②被害を受けた資産が生活に通常必要な資産であること(事業用資産を除く)
(2)災害免除法
次の①から④のいずれにも該当すること
①災害により被害を受けた住宅や家財があること
②住宅や家財に生じた損失額が、その住宅又は家財の価額の50%以上であること
③災害にあった年の所得金額が1,000万円以下であること
④その災害による損失について、雑損控除の適用を受けないこと
3、どれくらい軽減されるの?
それぞれの軽減措置は以下の通りです。
(1)雑損控除
以下の①②のうち、いずれか多い方の金額を、所得金額から控除することができます。
①差引損失額(※)-総所得金額×1/10
②差引損失額のうち災害関連支出の金額-5万円
※損害金額+災害等に関連したやむを得ない支出の金額-保険金等の額
(2)災害減免法
軽減額は所得金額により定められており、以下の表の通りです。
損失額の算出方法
資産について受けた損失の金額は、被災直前の時価と被害直後の時価の差額を計算することが原則とされています。
しかしながら、被災部分を個々に判断して、時価を求めることは実務上困難なため、簡便な算出方法が定められています。
住宅・家財・車両等により取り扱いがことなりますので、詳しくはこちらをご参照ください。
また、損失額や被災割合を求める際に「り災証明書」を参考としますので、ご相談の際はご持参いただくとお手続きがスムーズになります。
4、どっちが有利なの?
どちらを適用した方が有利かは、その人の所得金額と損害額や災害関連支出の額によって異なります。
雑損控除は、所得金額を控除する方式で、控除しきれない場合は、翌年以後3年に繰り越して、各年分の所得金額から控除できます。
一方、災害減免法は、所得税額を直接免除する方式で、減免を受けた年の翌年分以降は、減免を受けることはできません。
どちらが有利は、それぞれ計算した結果によって選択することになります。
国税庁の電子申告を利用した場合でも、有利判定をしてくれますので、是非ご活用ください。
5、申告方法は?
(1)雑損控除
雑損控除の適用を受ける場合には、確定申告書に雑損控除に関する事項を記載するとともに、災害関連支出がある場合は、その領収書を確定申告書に添付するか、提示しなければなりません。
(2)災害免除法
災害減免法の適用を受けるには、確定申告書に適用を受ける旨、被害の状況及び損失額を記載することとされています。
6、その他の救済措置のまとめ
被災者向けの救済措置は「雑損控除」や「災害減免法の適用」のほか、以下の措置がありますのでご参照ください。
①申告期限の延長
②納税の猶予申請
③住宅借入金等特別控除等の特例
被害により居住の用に供することができなくなった場合、残り適用期間も控除を受けることができます。
また、被災者生活再建支援法が適用された市町村内に所在する住宅用家屋が被災し、一定期間内に新しい家屋を取得した場合、同控除を重複適用できる措置があります。
④予定納税の減額
⑤消費税簡易課税制度選択(不適用)届出に係る特例
⑥災害義援金等の非課税
詳しくは国税庁のホームページをご参照ください。
編集後記
相談会の告知をしていても、家の片づけや仕事が忙しくて、なかなか救済制度ご利用でいない方がたくさんいらっしゃるようです。
本日は税制的な支援策の概要を告知させていただきましたので、是非情報を共有していただき、1人でも多くの方が制度をご利用していただくことで、生活再建の手助けとなれれば幸いです。
また、個別にご相談がある方はいつでもお気軽にお声がけいただければ幸いです。