法人成りで本当に得する?
こんにちは。千葉県鎌ケ谷市の税理士池田光智です。
さて、新年度で開業の相談も多い時期となりますので、本日は改めて法人成りの税制上のメリットについて解説したいと思います。
開業を考えている方は是非ご参照ください。
こんなにある法人成りの節税メリット
1、所得税の累進課税制度と法人税率との差異
個人事業の場合は、所得税率が累進課税制度になっており、最高税率が所得4,000万円超の場合で45%です。
さらに、平成49年まで復興特別所得税として、別途、所得税額の2.1%が課税されます。
法人の場合は、利益800万までの法人税率が15%で、800万を超える部分については23.4%の税率が課されています。
所得が一定の水準を超えると、法人税より累進課税制度の所得税の税率の方が高くなることがわかります。
2、給与所得控除
個人事業の場合は、事業収入-必要経費=事業所得となり、事業所得から控除できる項目は青色申告特別控除で最大65万円です。
法人の場合は、社長の所得は給与所得となりますので、給与所得控除が適用され、最大で220万円の給与所得控除が適用されます。
所得税は累進課税ですので、所得が減る効果だけでなく、税率もより低い段階で計算されますので、2つの節税効果を受けることができます。
(例)個人所得が1,000万円だった場合の税金(概算で千円以下切捨て)
※わかりやすくするため、控除項目は基礎控除のみで計算しています。
≪個人事業の場合≫
1,000万円-65万円(青色控除)=935万円(所得)
935万円-38万円(基礎控除)=897万円(課税標準)
→ 所得税 142万円 住民税 90万円
≪法人の場合≫ ※利益をすべて給与として支払うと仮定
1,000万円-220万円(給与所得控除)=780万円(所得)
780万円-38万円(基礎控除)=742万円(課税標準)
→ 所得税 107万円 住民税 74万円
≪差額≫
232万円(個人)-181万円(法人)=51万円
∴ 法人の方が、51万円も税金が少なくなります
3、親族に対する給与
個人事業の場合は、事業主と生計を一にする親族に対する給与は青色専従者として届出をすれば、専従者給与として経費にすることはできますが、年間所得金額が38万円以下でも、配偶者控除と扶養控除の適用を受けることができません。
法人の場合は、生計一親族に給与の支給をしていていれば、損金経理できるのに加え、所得金額が38万円(年収103万円)以下であれば、配偶者控除や扶養控除の適用が可能となります。
また、平成30年分以降、配偶者の年収が103万円超150万円以下なら配偶者特別控除を適用し、配偶者控除と同じ38万円の所得控除が受けられます。
ただし、納税者本人の所得が1,000万円を超える場合には、配偶者控除及び配偶者特別控除は受けられませんのでご注意ください。
4、 退職金
個人事業は、事業主及び事業主と生計を一にする親族に対する退職金を支払うことができません。
法人ではこの退職金を一定の範囲内で支払うことが可能で、損金経理できます。支払われた退職金の課税関係ですが、一定の退職所得控除を受け、さらに2分の1が控除された金額に分離課税で所得税率が課税されますので、かなりの優遇措置がとられています。
5、出張旅費規程
個人事業では、事業主が出張しても出張手当を支払うことができません。
法人では、社内規定を作成していることを前提に、経営者が出張した場合にも出張手当を支払うことができ、会社は損金経理が可能です。
支払われた出張手当は給与課税されず、経営者は非課税で手当てを貰うことができます。
6、 生命保険料
個人事業では、生命保険料控除は最大で12万円ですが、法人では支払った保険料の一定額を損金経理することができる商品があります。
商品の多くは課税の繰延効果ですが、使い方によっては大きな節税となります。
使い方を間違えると思わぬお通し穴がありますので、契約の前に税理士に相談しましょう。
7、青色欠損金の繰越
個人事業の青色欠損金の繰越期間は3年間ですが、法人の青色欠損金の繰越期間は9年間です。(平成30年4月1日以後開始する事業年度より青色欠損金の繰越期間が10年となります。)
8、消費税の免税期間
消費税は基準期間(前々事業年度)の課税売上高が1,000万円以下の事業者は、納税義務が免除されるため、法人を設立した1期目と2期目は基準期間がないので、原則として消費税の免税事業者となります。
課税事業者だった個人事業主が法人成りして、事業を法人で開始した場合も同様の取り扱いですので、消費税の免税効果は大きいといえます。
但し、1期目の要件によっては、1期目や2期目から課税事業者となる場合がありますのでご注意ください。
デメリットにご注意を!
1、 赤字でも納税
個人事業では、赤字の場合、所得税も住民税も課税されません。
しかし、法人で赤字の場合、法人に対し住民税の均等割りが課税されます。また、資本金が1億円を超える会社の場合は、事業税の外形標準課税も課税されます。
2、事務負担の増加
法人では、複式簿記による会計帳簿の作成が必要です。また、申告書の作成や議事録の整備など厳密な会計処理が求められるため、事務負担が増加します。
3、社会保険への強制加入
個人事業では、法定業種を除いて従業員が5人未満の場合は社会保険が任意加入です。
法人では、代表者1名の会社でも強制的に社会保険の加入義務があります。
従業員を雇用する場合は、給与の額面金額だけでなく、社会保険の会社負担分(1/2)も加味して計算しなければ、思わぬコスト増に苦しむことになります。
編集後記
今月末で事務所開業丸一年となります。
新しい顧問先も徐々に増えて、新たな出会いと発見の日々です。
勤務税理士時代に比べてすべての業務が自己責任となりますので、申告を間違えてはならない等、業務の緊張感もありますが、お客様に満足していただける面談をしただけでも、喜びは今までに比べて何倍にも感じます。
開業して一番の利点は、自分の采配でお客様にかける時間を納得いくまでとることができ、お客様の立場で、それぞれに最も即した提案をできることです。
弊所で一番大事にすることは顧客満足度を最大限に上げることです。
お客様の満足=自分の達成感ですので本当にやりがいを感じて日々仕事をしています。
開業をお考えの方は是非お気軽にご相談ください。