中小法人等と中小企業者等とは
こんにちは、千葉県鎌ヶ谷市の税理士池田光智です。
中小企業税制を適用していく上で、重要な用語の定義がありますので、最初にきちんと押さえておく必要があります。
法人税法上の「中小法人等」と租税特別措置法(以下「措法」)上の「中小企業者等」の違いをご紹介します。
1、用語の定義
(1)法人税法上の「中小法人等」
「中小法人等」とは、次の①から③に掲げる法人です(法57条11項)。
① 普通法人のうち、資本金の額もしくは出資金の額が1億円以下であるもの(大法人 との間に大法人による完全支配関係がある普通法人または複数の完全支配関係がある大法人に発行済株式等の全部を保有されている法人を除く)または資本もしくは出資を有しないもの(相互会社を除く)
② 公益法人等または協同組合等
③ 人格のない社団等
(2)租税特別措置法上の「中小企業者」
「中小企業者」とは、措法42条の4に規定する中小企業者であり(措法42条の4第12項5号、措令27条の4第10項)、次の法人をいいます。
① 資本金の額または出資金の額が1億円以下の法人
ただし、同一の大規模法人に発行済株式または出資の総数または総額の2分の1以上を所有されている法人および2以上の大規模法人に発行済株式または出資の総数または総額の3分の2以上を所有されている法人を除く。
② 資本または出資を有しない法人のうち常時使用する従業員の数が1,000人以下の法人
2、適用関係の違い
(1)中小法人等
中小法人等に該当しないと以下の優遇処置が受けられなくなります。
①貸倒引当金の繰入れ
銀行、保険会社又は金融に関する取引に関する金銭債権を有する法人など、一定の法人を除き貸倒引当金を繰り入れることができなくなりました。
②欠損金等の控除限度額の縮減の不適用
青色申告書を提出した事業年度の欠損金及び災害による損失金の繰越控除制度における控除限度額は、繰越控除をする事業年度の控除前所得の金額の一定の割合が控除限度額となります。
③軽減税率
普通法人の各事業年度の所得の金額のうち、年800万円以下の金額に対する法人税の軽減税率の適用はありません。
④特定同族会社の特別税率(留保金課税)の不適用
留保金課税が適用されることとなります。
⑤貸倒引当金の法定繰入率の選択
一括評価金銭債権の貸倒引当金の繰入限度額の計算において、法定繰入率の選択は行えず、貸倒実績率により計算することとなります。
⑥交際費等の損金不算入制度における定額控除制度
定額控除制度の適用はできず、支出する交際費等の額のうち、飲食その他これに類する行為のために要する費用(専らその法人の役員若しくは従業員又はこれらの親族に対する接待等のために支出するものを除きます。)の額の50%に相当する金額を超える部分の金額が損金不算入となります。
⑦欠損金の繰戻しによる還付制度
解散、事業の全部の譲渡など一定の事実が生じた場合の欠損金を除き、この制度による還付の請求は行えません。
(2)租税特別措置法42条の4
措法42条の4に規定する中小企業者に該当すると「中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却」の適用や、所得拡大促進税制や試験研究費の税額控除制度などで上乗せ措置が適用されることになります。
普段はあまり気にしないでも問題ありませんが、増資、親会社の組織再編、会社の株を別の会社に売却した際の最後の事業年度などの申告で、いままで使えていた制度が使えなくなることがありますのでご注意ください。
◆中小企業者等の判定時期
上記租税特別法の特例措置と中小企業者等の判定時期は、それぞれ異なるので更に注意が必要です。
例えば、「中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却」は中小企業者等に該当しなくなった日前に取得をして事業の用に供した機械等については適用があります。
一方で「試験研究費の税額控除の特例措置」については、事業年度終了の時の現況によって、中小企業者等に該当するか判定します。